アメリカでは死因の第四位になってしまったアルツハイマー型痴呆症
高齢化社会を迎えた日本においても痴呆は深刻な問題です。老人性痴呆は脳梗塞などの後遺症として起こる「脳血管障害型痴呆」と「アルツハイマー型痴呆」、両者の混合型に分かれます。
わが国ではその割合は5対3対2といわれますが、近年は欧米のようにアルツハイマー型痴呆が増加しています。アルツハイマー型痴呆は、脳の萎縮、老人斑(タンパク質のシミが神経紳胞外に沈着する)、神経原線維変化(タンパク一質が糸くず状にからんだものが神経細胞内にたまる)を三大徴候とする痴呆症です。
記憶だけでなく、思考、判断、感情などにも障害が及び、患者は大脳の機能廃絶の結果、2〜15年で死亡します。米国ではすでにアルツハイマー型痴呆が死因の第4位を占めているといれれ、わが国でも今後は死亡率が高まることが予想されます。
ビタミンEが脳の酸化ストレスから守る
脳は水分を除けば、重量の半分が脂肪から成り、多価不飽和脂肪酸をたっぷり含むので、酸化ストレスに非常に弱い組織です。
アルツハイマー型痴呆に見られる老人斑は、アミロイドI β ペプチドというタンパク質から成り、アルミニウムも含まれることがわかっています。
このアミロイドもアルミニウムも活性酸素の発生源となります。アルツハイマー型痴呆では、酸化に弱い脳で活性酸素が多量に発生しつづけた結果、脂厨見過酸化の進んだ神経細胞が次々に死んで脱落し、脳の萎縮を招くと考えられています。アルツハイマー型痴呆患者の脳を調べると、多価不飽和脂肪酸の酸化による過酸化脂質が著しくふえる一方、脳内で抗酸化に働くビタミンE
の濃度が低下しています。
血中B1濃度も低下している
アルツハイマー型痴呆の治療にはビタミンB1の大量投与も試みられています。脳の神経細胞から神経細胞へ情報の受け渡しを行う物質を神経伝達物質といいますが、アルツハイマー型痴呆では、ことにアセチルコリンを神経伝達物質とする大脳皮質などの神経細胞が死んで脱落します。
ビタミンB1は、このコリン作動性神経細胞の末端に高濃度で含まれています。その作用の1つは、コリンエステラーゼ( アセチルコリン分解酵素) の働きを阻害するなどして、アセチルコリンの作用を高めることにあると推定されています。 アルツハイマー型痴呆患者の脳ではまた、大脳皮質の広い範囲でB1に依存する酵素の活性が著しく低下していることもわかっています。
中程度のアルツハイマー型痴呆患者にビタミンB1誘導体(TTF D)を1日100mg投与したわが国の研究によると、12週間で痴呆症状の改善が見られました。 重症のアルツハイマー型痴呆患者では、同じ年齢層の健康な人にくらべ、血中Bl濃度が明らかに低いといわれ、血中B1濃度がアルツハイマー型痴呆発症の指標になりうるのではないかという意見もあります。
最近、物忘れがはげしくなったと先々が不安なかたは、Eを1日100〜300mgに加え、B1を所要量の10倍の1日10mg程度、摂取してみるといいかもしれません。
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